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スルーハイカーの条件

 PCTスルーハイクのあと多くの人と話す機会を得たが、そこで感じたのがスルーハイクのハードルをあまりにも高く考えている人が多い、ということである。新しいことを始めるときの常で、そこに不安が伴うのは当然のこと。しかし一歩踏み出してしまえば、あとは何とかするしか無いし、たいていは何とかなるものである。自分にとって何よりも困難な一歩は、仕事を辞めてスルーハイクに挑戦すると決断したことだった。

 スルーハイカーの条件。偉そうなタイトルだが少しでも未来のスルーハイカーの背中を押せればと思い、ここに自分の考えを書いてみる。

ハイキングが好き、自然の中で過ごすのが好き


 必須条件、なによりもこれが大事。この気持さえ変わらなければ、あとは何とかなるだろう。数ヶ月というそのトレイルの長さがハイカーをふるいにかける。この条件に適合する人はより深くハイキングに傾倒するし、適合しない人は去っていく。このどちらに自分が属するのか、スルーハイキングをスタートしてから初めて知るという人も少なくない。
 ある程度の苦労はスルーハイキングに付きもの。しかし、それを補って余りある「楽しみ」がそこにはある。ロングトレイルは我慢して歩くものではない。結局は、純粋に毎日のハイキングを楽しんでいる人が残るのだろう。

技術


 必要なのは山で歩いて泊まるための基本的な技術。日頃からテント泊で歩いている人ならまず問題ないだろう。ハイグレードな登山技術は必要ない。スルーハイキングはスポーツというよりも生活、冒険というよりも旅。スルーハイキングのベテランとはトレイルが自然と生活の場になっている人、と私は感じる。
 ウルトラライト・ハイキングの方法を知っていることは大きなアドバンテージになる。何も理論やベースウェイトなどに拘ることはないが、従来の日本の登山技術に固執しない方がよい。スルーハイキングを始めてから徐々に自分のスタイルを変化させていっても良いだろう。何が必要で何が不必要なのかを知り、必要最低限の荷物で済ます。これも立派なひとつの技術である。

体力


 性別・年齢(10代から70代まで)に関係なく多くの人々がロングトレイルを歩き通している。一般的な登山者並の体力があれば問題ないし、スルーハイキングを始めて一ヶ月もすると自然と必要な体力は備わってくる。歩くスピードよりも、一日のうちでどれだけ長い時間歩けるかが重要だろう。
 体力に自身のない人は荷物を軽くするのが近道か。20キロ以上あるような大型バックパックでのスルーハイキングは限られた人にしか達成できないだろうが、ウルトラライト・ハイキングの方法がそのハードルを大幅に下げてくれる。もし荷物が20キロ以上だったら、私もロングトレイルを歩き通せる自信はない。

ひとりで決断・行動できる


 週末ハイクなら未だしも、数千キロのトレイルを人頼りで歩き通すことはできない。もちろんトレイルを取り巻く人々のサポートはありがたいし、ハイカー同士も互いに助けあって共に進む。しかし個々のスルーハイカーはそれぞれ自分のハイキングスタイルや意見を持っていて、自分の道は自分で決める。カップルの場合を除けば、最初から最後までずっと行動を共にするようなグループは稀だろう。必ず自分一人で決断・行動しなければならない時がある。「Hike your own hike(自分のハイキングを貫け)」がスルーハイカーの合言葉。
"The man who goes alone can start to-day; but he who travels with another must wait till that other is ready" -Henry David Thoreau


 病気・怪我・家族の事情など、時には不可抗力によってスルーハイキングを断念せざる得ないこともある。そういう意味では「運」も大事な条件。大した問題もなく歩き通すことが出来た自分の幸運に私は感謝しなければいけない。途中でバックパックとその中身すべてを盗まれ、買い直す資金もないのでリタイヤ、そんな不運なハイカーもいる。

英語


 これは必要条件。出来たら便利であろうが、出来ないとしてもスルーハイクを諦める理由としては全く不十分。自分の英語力は高校までの英語の授業のみ。もちろん成績もいまいち。知っている単語を並べていれば何とかなる。同じ目的を持つハイカー同士ならば言葉は重要ではないと思う。

時間


 PCTやCDTを全行程通して歩きたいならば、一般的に5ヶ月間程かかる。もし健脚で補給等を要領よく出来るならば3ヶ月間でも可能か。逆に遅い人なら6ヶ月間は欲しい。

お金


 ある程度まとまったお金は必要だ。しかし半年間都内で一人暮らしするよりはよっぽど安上がり。現地の本当に節約しているハイカーは30万円程度(装備代を除く)でやり繰りしている。1マイル1ドルが理想とか。英語の不味い自分はそこまでスマートには出来ず、準備・日本からの荷物の送料・飛行機等を含めてPCTでは80万円程度(装備代を除く)かかってしまった。

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