PCT・CDTに関する文献・地図。私の探した限りでは、PCT・CDTを中心主題とした日本語の文献は見当たらず、ネット上で公開されている日本人PCTハイカーたちのページ(リンク参照)が唯一の貴重な日本語の情報源である。本当にPCT・CDTのスルーハイキングを考えている人にはまずYogi's Handbookを読むことを強くお薦めする。
オフィシャルのガイドブック。三冊でPCT全ルートをカバーする。地図、トレイル上の水場、キャンプ適地、分岐、自然環境、サイドルート、補給するための町のことなど、情報の新鮮さには少々欠くもののその情報量は大変なものでやはりPCTの最重要基本文献である。特にトレイルに関する記述は詳細を極める。あまりに詳細すぎるので前もって読もうとしても要領を得ない部分があるかもしれない。自分はこれから歩くセクションに関する部分だけを直前に拾い読みしていた。本のままだと結構重いので、切り裂いてその区間に必要な分のみを携帯するのがスルーハイカーの間では一般的。地図はこの本に載っているものだけで全行程歩けるが、トレイルに沿った範囲の狭い地図(1:50,000)だけなので、山座同定のようなことをしたいならば他に広範囲の地図を用意した方が良いだろう。
PCT上の距離、標高、水場などのデータを要領よく表にしてまとめたもの。PCTスルーハイカーはこの本のメキシコ国境からカナダまでの通し距離に基づいてPCT上の位置を把握している。いかがなものかと思うが、簡素ながら必要な最低限の情報が載っているので、地図も持たずこのデータブックだけで歩いているハイカーも少数いた。
Yogi(著者のトレイルネーム)はトリプルクラウンを達成した上、さらにPCTは三度もスルーハイクしている女性ハイカーであり、スルーハイカーの視点から作られたこの本は知らないと損する情報が満載、スルーハイカーのマストアイテムである。一般流通していないがYogi本人のホームページで購入出来る。 二冊組みになっており、計画段階で使用するPlanning Guideとトレイル上で使用するHandbookとに分かれている。
Planning Guideは異なる意見を持ったスルーハイカー達の声が多数収録されており、スルーハイクをする上での現実的諸問題について様々な角度から触れている。スルーハイキングという生活がどのようなものなのか、を知るにはこの本が一番だと思う。
Trail Tips and Town Guideはトレイルや町の情報がバランスよく実用的にまとめられている。かつてスルーハイカーに使われていたPCTタウンガイドはもう長らく更新されず絶版になっているようなので、現在はこの本が唯一のタウンガイドである。町の情報だけでなく、トレイルへのアクセス、それぞれの水場に関する最近の状況、トレイルの間違えやすい場所や危険な場所、お勧めのサイドトレイル、など挙げれば限が無いほど有用な情報がセクションごとに網羅されている。インターネットを通じて毎年春に改訂情報が提供されているので情報の鮮度も良い。どれだけこの本に助けられたか分からない。この本無しのスルーハイクは考えられない。
13枚組みのジョン・ミューア・トレイル地図。PCTガイドブックの地図が1:50,000なのに対してこちらは1:63,360、詳細さの点ではガイドブックに譲るが、こちらはカラーの防水紙なので見やすさ・使いやすさは勝っている。PCTを歩く分にはこの地図は特別必要ないが、JMTを踏破するつもりならば、ガイドブックはTuolumne Meadows[942.7]からヨセミテ渓谷までの地図を欠いているので、これを準備しておいた方が良い。ちなみにPCTからMt. Whitneyへのサイドトレイルはガイドブックに地図が載っている。
ジョン・ミューア・トレイルはPCTの一部分でもあり詳細な紀行はとても勉強になる。著者はアメリカのロングトレイル文化を日本に紹介したパイオニアであり、後にアパラチアン・トレイルもスルーハイクしている。
シエラ・ネバダ山脈放浪の紀行。著者の清水氏はジョン・ミューア・トレイルのスルーハイキングだけでは飽き足らず、さらにハイシエラ・トレイル周辺も逍遥している。人の目に映る景色とは、同じ場所であっても人それぞれ異なり、その人の経験・知識が反映された唯一無二の景色である。実はPCT終了後に初めてこの本を読んだのだが、自分の見てきたものとは異なるジョン・ミューア・トレイルがここには描かれていて、再び新鮮にジョン・ミューア・トレイルを楽しめた。清水氏は気象予報士として働いていたそうで、ジョン・ミューア・トレイルにこれだけの様々な空の表情があったのだ、ということを知識の無い自分は思い知らされた。
そして何を隠そう清水氏はこの翌年2004年にPCTをスルーハイクされている。JMTだけでなくPCTに関しても私の大先輩なわけである。清水氏のホームページでそのPCTジャーナルが読める。
国がCDTの実現に向けて動き出す以前、30年以上前から独自に調査を進めルートの提案・整備を行ってきたCDTSのリーダーWolfによるガイドブック。このガイドブックのルートは通称ウルフ・ルートと呼ばれ、後に国が決定したCDTオフィシャルルートとは多くの部分で異なっている。しかし食料補給・水場・季節などを考慮したスルーハイカーの視点からのルート選択が好評で、毎年多くのスルーハイカーがウルフ・ルートを選択している。ウルフ・ルートがスルーハイカーの便宜を考慮して作られているのに対し、オフィシャルルートはそのイデアばかりを追って現実のスルーハイカーを置き去りにすることがある、というのが実際に歩いてみた自分の感想である。
全八冊に加え、更新情報をまとめた小冊子も別に二冊ある。一般流通していないので、直接CDTSに注文する必要がある。
Jonathan Leyがボランティアで作成しているCDTマップ。多くのバリエーションルートも含めてCDT全行程をカバーする。スルーハイカーからのレスポンスを反映させた多くの注がありがたい。この地図の登場でCDTスルーハイキングは大きく変わった。Ley自身も2001年のスルーハイカーなのだが、当時は数百の地図を自分で探して買い集めなければならず、さらに地図の整理、地図のフォーマットの違いなどでも相当苦労したようだ。地図作成の手間は計り知れない。無料配布とはいえ募金が推奨されるだろう。
地図はCDロムに焼かれた画像ファイルとして配布されるので、プリントは自分で行う。注文はこちらのページで。
PCTハンドブックでもおなじみYogiによるCDTハンドブック。大きな違いはPCTハンドブックがトレイルに関する情報を多く含んでいるの対して、こちらは純粋なタウンガイド。CDTにおいてはルートの選択肢が無数にあるので、PCTハンドブックのように至れり尽くせりとはいかない。
ヒッチハイクで町へ行く際、あるいは何らかの理由(山火事・悪天候・怪我・時間的制約など)で迂回ルートを強いられる時など、CDT-Romには載っていない広範囲を把握するのに役立つロードマップ。
ウルトラライトウェイト・ハイキングの入門書。絵が多く文も比較的簡単で、英語に抵抗がある人でも読みやすいと思う。入門書とはいえ侮る無かれ、従来のバックパッキングの方法しか知らない人にとっては青天の霹靂、バックパッキングが大きく変わるだろう。
ウルトラライトウェイト・ハイキングのパイオニアであるレイ・ジャーディンによるハイキング理論書。彼も最初は一般的なバックパッキングから始めて、自らの経験をもとに将に石橋を叩いて渡るようにして既成概念の武装を解いていき、現在の方法に行き着いたのだということがこの本を読むと良く分かる。彼の主張は徹頭徹尾自らの経験にのみ基づいていて、決してありきたりな一般論を振り回したりしない。時には一見奇異に思えるような彼の理論も、経験から生まれた故に一考の価値があるし、むしろ結果的には納得させられることも多い。ハイキングの方法論などに興味がある人にとってはとても刺激的な一冊。