逍遥遊
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8. Kennedy Meadows[702.8] - Independence[790.2]


いざシエラ山脈へ!

 6月2日快晴。Kennedy Meadowsに別れを告げていよいよシエラへ。ここから新たな装備として加わったベアキャニスターがずっしりと重い。丈夫なプラスチック製のケースで、キャンプの際にこれに食糧を入れてテントから離して置いておくことで、熊から食糧と自分の身を守るためである。重くて嵩張るのでハイカーには不評であるが、シエラの山域では携帯が義務付けられている。

 とは言え、この先に待っているであろう景色を思えば気持ちは軽い。一ヶ月以上砂漠を歩いてきたハイカーの目に映る木々の緑や豊富な水の流れ、花崗岩と雪とで輝く山々の姿はとにかく新鮮で、我々スルーハイカーに新たな力を吹き込んでくれる。

 ああ!夢にまで見たシエラがもう目の前!


洗礼!?

 翌日6月3日は朝から天気が怪しい。昼ごろには小雪が舞いだす。もちろんここはシエラ、雪の覚悟は出来ているつもりだったが・・・・。

 午後三時ごろ雪の勢いが強まり、あっという間に一面真っ白。急いでタープを張って雪をしのぐ。雪に潰されるのを防ぐためにこまめに屋根を叩かなければならず寝るわけにもいかない。三日前にサボテンに別れを告げたばかりの自分には、あまりにも急激な変化である。幸いにも夜には止んでくれたが、このまま降り続けたら不味かった。目を覚まされるようなシエラの洗礼であった。
無事朝を迎える。
今日は天気も大丈夫!
おかげでトレースの無い素晴らしい景色を楽しめた。

JMTと合流、まずはMt. Whitneyへ

 6月5日早朝、この日も天気が安定せず、雪の降る中をCrabtree[766.3]に到着。ここからついにPCTとジョン・ミューア・トレイル(以下JMT)が合流して北上していくのだが、逆方向にPCTから離れてJMTを東に向かうと8マイル程でマウント・ホイットニー山頂へ行ける。マウント・ホイットニーは標高4418m、アラスカを除いたアメリカ本土の最高峰である。往復してもたったの16マイル!逃す手は無い、と思いここCrabtreeをベースキャンプとして山頂往復をこの日試みた。

 しかし結論から言うと、山頂までは行けなかった。午前中は天気が安定せず出発が遅れ、またここ数日の雪でトレースも無くなっていたこともあって時間が掛かりすぎてしまったのだ。山頂2マイル程手前、急斜面を登るスイッチバックの途中で引き返すことになった。

 悔しくない、と言うと嘘になる。しかし山頂に向かう途中の区間は素晴らしく、ここだけでも十分歩く価値のあるトレイルであった。そういえばこの日まで三日間誰にも会っていない。シエラを独り占め!
山頂へ向かうスイッチバックにて。結構怖い斜面もあった。
Guitar Lake
中央奥の斜面をトレイルは登っていく。
スイッチバックの途中から来し方を望む。ここで引き返した。

Forester Pass

 PCTに戻り、気を取り直してForester Pass[780]へと向かう。この峠は標高4017m、PCT全行程中の最高標高点である。PCTのハイライトのひとつでもある。
Bighorn Plateau[773]
写真中央の尾根の低くなった部分がForester Pass。
写真右下からスイッチバックで登り、左上の鞍部へとアプローチする。
Forester Pass到着!
峠から来し方を振り返る。
峠の下り。
Forester Passでセルフショット。
峠を後にする。
峠を振り返る。つい数時間前は奥のあの白い尾根の上に立っていたのだ。

失敗!

 Forester Passを越えた後、PCTと別れてサイドトレイル経由でIndependenceという町に補給に下りた。そしてモーテルにチェックインして荷物を整理していると、信じられないことに自分のタープが無くなっている!バックパックに外付けしていたわけではないので、落としたのではなくどこかに置いてきたようだ。こんなことがありえるのか?小物ならまだしも、シェルターである!自作タープだったので同じものに買い換えることも出来ない。

 今となっては笑い話であるが、この時の精神的ダメージは大きく、回復まで3日間のゼロデイを必要とした(笑)。シエラはシェルター無しで探しに戻れるような環境でも無いので、観念してアウトドアショップで新しいテントを買った。財布のダメージも大きかった(涙)。
Independenceの町からシエラを望む。

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