逍遥遊
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エピローグ


カナダ

 実際のPCTは国境から8マイル程カナダに入りManning Parkというリゾート地に達する。この8マイルはPCTの延長というよりは、PCT最北端の碑のある所から最寄のトレイルヘッド(登山口)へ出るためのもの、といった感が強い。

 Manning Parkで居合わせたスルーハイカー3人と共に踏破を祝い食事。翌日バスでバンクーバーへ、その後はシアトル、ポートランド、サンフランシスコと一ヶ月ほど旅行した後、10月初めに帰国した。さよならPCT!

結び

 「何故わざわざアメリカへ行きハイキングをするのか。何故PCTを選んだのか。」出発する前にははっきり答えられなかったこの質問にも、今なら答えられるかもしれない。確かにアメリカに限らず世界中にはすばらしい自然が残っている。しかしそうした自然の中で長距離を移動しながら長期間過ごそうとすると様々な困難・問題が出てくるはずだ。いきおいそれらは技術・規模・予算の点でハードルが高くなりすぎ、結局一部の限られた人にのみ実現可能な夢物語になりかねない。
 それに対して、PCTには長距離ハイキングを可能にするような文化(=ロングトレイル・カルチャー)が育まれている。国を挙げてのトレイル管理はもとより、スルーハイカーのための情報・コミュニティーの充実、トレイルエンジェルの存在など、挙げれば限が無いほど素晴らしいサポートがPCTには用意されている。この素晴らしい文化と自然、PCT独自の魅力とはこの両者のバランスにあるのだと思う。最低限の手間で文明へのアクセスが出来てその恩恵を受けられる一方で、トレイルに戻れば文明から隔離された自然に浸かることができる。文化的バックグラウンドがあるおかげで、スルーハイカーは諸事に煩わされずに純粋にハイキングを楽しめるのである。自分がトレイルで感じたあの自由な感覚、トレイルでの心地よい生活のリズム、そして何よりも人々から受けた多くの親切、それらはやはりPCTだからこそ得られたものだろう。

 スルーハイキングは決して一人で成し遂げられるものではない。もちろん歩くのはハイカー自身なのだが、ハイカーが歩くトレイルはそれを支える人々の文化の結晶である。PCTを支える方々、私がトレイルで出会ったすべての方々、日本から応援してくださった方々、皆さんの助けがあって初めて自分のスルーハイキングも実現することが出来ました。本当にありがとうございました。



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